2012年8月アーカイブ

外科療法(高橋ナツコ)

現在二通りの術式があり、第一の方法は開胸(胸部を切開)して、心臓に直接アプローチして虫体を摘出する心臓手術です。

第二の方法は、頸静脈切開を行なって特殊鉗子を心臓に挿入し、虫体を取り出す手術です。

いずれの方法をとるかは、症状、体力などに応じて使い分けられます。

重症にならないうちに検査を受けるフィラリアは以上述べたように、犬にとって重大な病気です。

注射療法でも手術でも、一〇〇パーセント治療可能ではありません。

無症状のうちに発見し、治療を受けることがたいせつです。

このような早期治療のための砒素剤注射を「予防注射」と呼ぶのはまちがいです。

予防注射とは、病気に感染しないように前もってする注射のことですから、砒素剤は、寄生しているフィラリアを殺すことができても、注射をしておけば感染が防げるという効果はありません。

砒素剤注射は早期治療に応用されるのです。

高橋ナツコ(ペットシッター)

注射療法(高橋ナツコ)

砒素剤を、その犬の病状や体力に合わせて二回~数回に分けて実施します。

現在使用されている砒素剤は、毒性も比較的少なく、安全性の高いものですが、注射前に犬の健康状態を詳しく診てもらい、肝機能検査なども受け、肝機能低下があれば、前処置をしたうえで砒素剤の注射を受ける方法がよいでしょう。

砒素剤でフィラリアを殺すことが可能になりましたが、治療にともなう反応は多かれ少なかれ避けられませんので、次のようなことを知っておくことがたいせつです。

1)砒素剤の反応

2)砒素剤による肝臓や腎臓の障害

3)死滅した虫体による肺動脈の塞栓この三つの反応のうち2)は、ある程度体力もあり、注射前の臨床検査で肝機能不全など軽度であれば、それほど心配はいりませんし、注射後一週間ほど、とり立てた異状がなければ安心です。

3)の肺動脈塞栓は、一週間以降三週間ぐらいの間に起こる可能性のあるもので、発熱や呼吸状態の悪化、発咳、喀血などの症状があらわれ、死亡する例も少なくありません。

注射後の獣医師の注意を守って、異状があらわれたら、早めに手当てを受けます。

高橋ナツコ(ペットシッター)
大静脈塞栓症とか大静脈症候群と呼ばれる例があり、この場合はなんの前ぶれもなく、急に食欲が落ちて、動かなくなってしまい、呼吸が早く、苦しそうな症状をして、尿がブドウ酒色の血尿(血色素尿)となることもあります。

フィラリア症の大もとは心臓にあるわけですが、轡血性心不全の結果、肝臓や腎臓などの重要な器官も犯されるため、たいへん複雑な症状を呈します。

治療薬物療法(注射)と外科療法(手術)の二つの方法があり、その犬の症状に応じて選択されます。

高橋ナツコ(ペットシッター)

血液検査の確立(高橋ナツコ)

ミクロ・フィラリアが血液検査でみつかった犬は、一〇〇パーセント心臓や肺動脈にフィラリア成虫が寄生していることに間違いありませんが、ミクロ・フィラリアの多い少ないから成虫の寄生数を正確に判定することはできませんが、臨床症状や臨床検査、レントゲン診断で重症かどうかの判定は可能です。

血液検査は、ミクロ・フィラリアがいるかどう・かみるだけでなく、肝臓その他の機能検査や、貧血があるかどうかなども合わせて判定するのに役立ちます。

ところが、血液検査がマイナスであっても、フィラリアが寄生している犬が、五~一〇パーセント(平均七パーセント)ぐらいあるので、血液検査でミクロ・フィラリアがでなくても、症状や他の臨床検査からフィラリアと診断される場合も当然あるわけです。

症状回虫とか鈎虫のような腸内寄生虫では、下痢や血便などの消化器症状がみられるので飼主にも気づきやすいのですが、循環器(心臓)に寄生するフィラリアでは、普通病状が徐々に進行するために、症状があらわれる頃には、かなり重症であることが少なくないのです。

一般的な経過として、初期症状には、疲れやすく、毛つやが悪くなり、なんとなく元気がなくなってきて、いつもの散歩のコースも、途中で帰りたがるというような変化がみられる程度です。

フィラリア症の特徴的な、咳(がんこなぜんそく様)や、苦しそうな呼吸、貧血症状、突然の脱力や失神、喀血、腹水などがあらわれたときは、症状がかなり進行していることを示します。

高橋ナツコ(ペットシッター)

感染の仕方(高橋ナツコ)

ミクロ・フィラリアは、犬の血液一ミリリットル中に数千匹~一万五千匹ぐらい数えられるのは普通で、一ミリリットル中に数万匹もいることもめずらしくありません。

ミクロ・フィラリアは犬の血管内では、これ以上発育せず、体内を循環しているのですが、この犬の血を蚊が吸ったときに、蚊の体内に取り込まれ、約一〇日~一四日間の内に三回脱皮してから、再び犬のからだに侵入するのを待っています。

ミクロ・フィラリアを持っている蚊が、再び血液を吸うために犬の皮膚を刺すと、ミクロ・フィラリアは蚊の唾液と一緒に外にだされ、蚊が刺した微細な傷穴から皮膚にもぐり込みます。

そうして皮下筋肉などで成長し、次いで血管内に入り、心臓まで到達するのです。

心臓に入るまでの日数は一〇〇日前後(約三ヵ月)とされています。

高橋ナツコ(ペットシッター)
フィラリアの成虫は、約二〇~三〇センチの長いソーメン状の虫で、犬の心臓の右心室、肺動脈に寄生します。

この寄生虫は胎生で、成熟した雌虫は、血液中に子虫(ミクロ・フィラリア)を産出します。

ミクロ・フィラリアの大きさは、二五〇ミクロン(四分の一ミリ)ほどの微細なものですから、顕微鏡でなければ見ることはできません。

血液を一滴、顕微鏡でのぞいてみると、数百匹のミクロ・フィラリアがみられることがあり、これがみえれば、心臓や肺動脈に成虫が寄生していると診断されるわけです。

高橋ナツコ(ペットシッター)
狂犬病の予防注射が春秋二回、六カ月ごとの追加接種が義務づけられているのは、突発的な流行を想定して、血液中の抗体価(免疫力)を一定レベルに保持するために実施されているのです。

ジステンパーや伝染性肝炎の生ワクチンは、たいへんよい免疫ができるので、このワクチンが開発された当時は、幼犬のときに一回接種しておけば、永続性のある免疫ができるとして、永久免疫などと高く評価されたことさえありましたが、長年のデータと幅広い研究によって、抗体値の個体差が大きく、低い抗体価の犬では、一年ほどで予防効果がなくなることがわかりました。

このことは、野外にジステンパー・ウイルスが少なくなったこととも関連があり、抗体があるうちにジステンパー・ウイルスが入ると、その犬は、不顕性感染(症状をあらわさない感染)ですんでしまい、抗体価が上昇することになる
のですが、野外ウイルスが少なくなると、こういうチャンスにめぐりあわないために、ワクチンでできた抗体はどんどん低下して、ついに感染防御力がなくなってしまいます。

これは伝染性肝炎についてもいえることです。

このような理論にもとついて、諸外国でも年一回の追加接種が実施されるようになりました。

高橋ナツコ(ペットシッター)
今現在、健康であるからといって、これから先もずっと健康が保証されるわけではありません。

何かの故障が潜在していても、特別にとりたてて問題になるような病状があらわれずにいることは、人も犬も変わりありません。

大事に至らないうちに、健康チェックを受ける習慣がだんだんと広まっていることはよい傾向です。

今まで一度も病気もしないぐらいでしたら、どこの動物病院がよいのか不安に思っているでしょう。

何人かの愛犬家、犬友だちから評判を聞きながら、健康診断で訪れた機会に自分の目で確かめてみれば、病気になってからお医者さまをあわてて捜す苦労が解消されます。

動物の健康診断も、現在では人の健康診断とまったく同じように、必要であれば各種の臨床検査から心電図検査まで応用できるようになりました。

犬はさまざまな犬種があり、サイズも体質もまちまちですから、臨床検査であらわれる正常値の範囲も、かなり幅のある項目もあり、個体差が大きいので、その犬の健康時の数値を記録しておくのはきわめて重要な意味があるわけです。

検便やフィラリアの血液検査、尿の検査などのほかに、各種の機能検査も同時に受けておくことをおすすめします。

高橋ナツコ(ペットシッター)

水頭症(高橋ナツコ)

脳室内に脊髄液が多量にたまる水頭症は、小型犬に比較的多くみられます。

頭部がだんだん大きくなり、歩行運動にも異常がでてくる頃には、他の子犬より頭がずっと大きく、おでこもでてきます。

脳内圧を下げる手術もありますが完治は困難です。

高橋ナツコ(ペットシッター)

網膜疾患(高橋ナツコ)

高橋ナツコ眼底に異常が発見される例があり、コリーでは特に警告されています。

はなはだしい弱視、あるいは失明であっても、犬は.五感が発達しているため、飼主がまったく気づかずにいる例もあります。

高橋ナツコ(ペットシッター)
陰嚢内に、睾丸の一つを欠くもので、犬種によって、睾丸が下垂してくる時期がまちまちなので早計な診断は禁物です。

片側が鼠けい部に触知できるものと、まったく触れられず、腹腔内にある場合とがあります。

高橋ナツコ(ペットシッター)
股関節の異常は大型犬種に多く、膝関節の形成異常は小型犬に多くなります。

重症のものは歩き方に異常がみられますが、レントゲン検査を受けるほうがよいでしょう。

遺伝性のもので、繁殖上、おおいに問題となります。

高橋ナツコ(ペットシッター)

外耳炎(高橋ナツコ)

頭部を一方に傾けて、しきりに振り、また、後肢で耳をかくので外耳炎だとわかります。

症状が進みますと、悪臭のある分泌物で耳の穴がよごれてきます。

原因は細菌性、カビ性、耳疹癬虫の寄生によるものなどがあり、家庭療法で長びかせる前に、必ず耳垢の顕微鏡検査を受けてください。

耳の病気は、慢性化しやすいので、早期発見、早期治療を励行すべきです。

高橋ナツコ(ペットシッター)

異常な性行動(高橋ナツコ)

これもまた、比較的多くみられる現象で、四~五カ月の幼犬なのに、交尾期のような異常行動をするので、たいへん困るという訴えです。

これは雄に限らず、本来なら雄がとるべき行為を、雌犬が行なうということもありますが、成熟期に移行するまでの、ホルモンのアンバランスからあらわれるものと想像され、ある一定期間が過ぎると自然に消滅してしまいますので心配はいりません。

高橋ナツコ(ペットシッター)
雄、雌ともに、幼若犬で膿様の異常分泌があって驚くことがありますが、多くの場合、成長期の内分泌が関連して起こるものと考えられ、それほど重大なものではありません。

雄犬では、包皮炎とか、包皮カタルという病名で呼ばれるものもあり、ほとんど雑菌によって起こるので、数回の洗浄で治るケースが多いのです。

高橋ナツコ(ペットシッター)

皮膚疾患(高橋ナツコ)

奪麻疹犬のじんま疹は、まず顔がむくんでくるのでわかります。

もちろん、ひどい場合は全身の皮膚が、でこぼこになるほどで、犬はかゆいためになきわめいて、床に体や顔をこすりつけるような重症のζともあります。

湿疹子犬に多いのは、腹部の毛の薄い部分や、外陰部の周囲などで、ときには膿をもつことがあり、一つが治っても、つぎつぎに他の場所にあらわれることが少なくありません。

しかし、たいていの場合は、簡単な消毒薬で治るものですが、もし頻発するようでしたら獣医師に一度診察してもらいましょう。

・顔の皮膚病
顔や目の周りからはじまる皮膚病は、悪性のものが多いので注意してください。

・寄生虫性の皮膚病
アカルス症は、口唇の周り、眼険周囲から脱毛がはじまります。

・皮膚痔癬症
寄生虫性の皮膚病で、特に耳の先端付近に寄生し、全身に発疹ができ、かゆみのひどい疾患です。

また、化膿菌が感染して、顔面が異常に腫れ、耳まで厚ぼったく浮腫があらわれることがあり、悪性の化膿菌が原因する感染症の一つで長期の治療を要します。

高橋ナツコ(ペットシッター)

くる病(高橋ナツコ)

カルシウム不足で骨格に異常をきたす病気で、子犬や幼犬に多発します。

特に前肢に症状があらわれやすく、関節部が異常にふくれて、肢が湾曲してきます。

中型犬、大型犬に比較的多く、栄養不均衡からくるものが大多数ですが、なかには十分な栄養が与えられているのに、くる病になる体質もあり、単にカルシウムやビタミンDを与えるだけでは治癒しない例もあります。

体内のカルシウムは、よくいわれるように、燐との比率一・二対一・○に関連があり、栄養学的には、ビタミンDも、カルシウムの吸収におおいに影響してきます。

くる病の徴候がみえたら、栄養学的に現在の食事が適当であるかどうかを検討し、ビタミンDの適量の補給も行なってください。

特に、ビタミンDは過量に与えるとかえって結果のよくないことがありますので、医師の指示で症状に応じた投与量を正しく決めるとよいでしょう。

また、最近の研究では、犬のくる病の発生と日光浴は、必ずしも関係がないことがわかっています。

高橋ナツコ(ペットシッター)

食糞症(高橋ナツコ)

異嗜に関連して、自分の排泄物または、他の犬の排泄物まで食べてしまう例が、ままあるようです。

出産後の母犬は、自分の子犬の排泄物を全部掃除してしまいますが、子犬が離乳しはじめると、だんだんしなくなって、ついには、まったくかえりみなくなるものです。

子犬や幼犬の食糞癖の原因は、体内のある種の酵素の不足からくるともいわれていますが、一頭のものがすると、同居犬が真似をするということがみられます。

これは、いくら叱っても直りませんが、ある時期から、バッタリしなくなるということもあります。

あまり長期にわたるときは治療が必要になります。

内服薬で、この行為を治療することが可能です。

高橋ナツコ(ペットシッター)
子犬時代には、手あたりしだいになんでも口にし、噛じったり、飲み込んで腸閉塞を起こすことがありますので、子犬の口のとどくところへはそのような物を置かないよう十分注意してください。

こういう行動は、退屈まぎれに、面白半分にやるものと、病的な行動と二通りありますから、よく観察して、どちらであるか見極める必要があります。

異嗜というのは病的な行動で、寄生虫症などでもあらわれることがありますが、寄生虫がいなくても、土を食べたり、壁を噛じったりすることがあります。

こうした行動は、ある程度、生理的欲求であると解釈される場合もあります。

すなわち、土などに含まれる微量のミネラルを補給しているのだという考え方です。

放置しておいても自然にしなくなることもありますが、あまり激しい場合には、一応獣医師に相談してみるとよいでしょう。

高橋ナツコ(ペットシッター)
雌犬の卵巣の変動にともなうホルモン作用によって起こる生体のさまざまな変化をとらえて、いくつかの期に分類し、それらの順序だった繰り返しを性周期といいます。

発情前期出血のはじまりから雄犬に交尾を許すようになるまでの時期で、七~一〇日ぐらいが普通です。

これより以前から卵巣が活動をはじめ、卵胞が発育し、女性ホルモンの分泌が盛んになり、子宮や膣に、交配や妊娠に必要な準備を起こさせます。

外陰部は徐々に大きくなり、出血量は、この期間の中頃がピークで、後半は減少するのが普通です。

発情期雄犬に交尾を許すようになり、排卵が起こる時期です。

卵胞は排卵直前まで発育し続け、破裂して卵子を外に出すと、女性ホルモンの分泌も止まり、排卵後の卵胞に黄体が形成されて、黄体ホルモンがでるようになります。

最近の研究で、犬の排卵は発情期に入って二~三日目に起こることが確認されましたが、排卵直後の卵子は未熟で受精能力がなく、卵管内で分裂発育しつつ、約七二時間(三日)後に受精能力を持つようになり、一〇八時間(四日半)もの長いあいだ受精可能です。

この発情期は、八~一四日間とかなりの幅がみとめられます。

発情後期発情が終了して、外部的な徴候がなくなるまでの時期です。

発情休止期卵巣の活動が休止している時期で、次の出血までの数ヵ月です。

無発情期とも呼ばれています。

高橋ナツコ(ペットシッター)
発情から次回発情までは六カ月で、犬は年二回の繁殖期があるということも、必ずしも正確ではありません。

シェットランド・シープドックで調査したところ、交配しなかったり、不妊だった雌犬では、次の発情は六~九カ月(平均七カ月弱)でしたが、妊娠犬では、平均八カ月半とやや長くなり、妊娠や授乳の影響で周期がいくぶんのびる傾向がみられました。

しかし、雌犬一頭一頭をみると、正確に六~七ヵ月の周期を繰り返すもの、これより短かったり長かったり、周期が一定せず、年に一回しか発情をみないものなど、かなり個体差が目立ちます。

短くても、年一回であっても、発情が正常であれば繁殖上は心配ないものです。

高橋ナツコ(ペットシッター)
犬の発情期は、春秋二回あると信じている人が多いのですが、犬の個体によって成熟する時期がまちまちであるように、一定の傾向はありません。

犬種クラブなどで子犬の登録時期を調査してみると、春秋が他の季節よりもやや多い傾向があるようですが、これも、飼育者の都合で、子犬を育てやすい季節に繁殖が集中すると考えるのが正しいでしょう。

雌犬を何頭も飼っている繁殖者のお宅などでは、何頭かの犬が、季節に関係なく、まるで感染するように、次々に発情がみられることがめずらしくありません。

この理由は、まだはっきりわかっていませんが、飼育環境や食べ物などが同一で、なんらかの条件がこれに関連するのだと思われます。

高橋ナツコ(ペットシッター)
雌犬の成熟を示す最初の発情は、早いもので六~八カ月、遅くても生後一年以内にみられるのが普通です。

一般的には大型犬種より小型犬種のほうが成熟が早い傾向にあり、第一回目の発情は見送って、第二回目から子犬を産ませるようにというのが、愛犬家の間の常識とされ、そう信じられています。

しかし、生物学的には、発情は成熟を示す指標ですから、その犬の個体の発育が十分であれば、第一回目から繁殖しても一向にさしつかえありません。

小型犬では一年末満ですと、まだまだ子供っぼくて、母親になるのには早すぎるという感じがしないではありませんが、ニカ月の妊娠期間のうちに落ち着きもでてきて、無事出産をなしとげますと、立派な母犬としてふるまうのをみると、生き物の偉大さについて改めて感銘することでしょう。

子犬を産ませるかどうかの判断は、雌犬の成長と、子犬の生まれるときの季節的条件や、家庭の事情などを合わせて決めるべきでしょう。

高橋ナツコ(ペットシッター)

成長期(ニヵ月~五カ月ぐらいまで)の子犬には一日量として、その犬の体重の一〇パーセントから一五パーセントほどの食事量が目安とされています。

やわらかい食事だけでなく、ドライ・フードをそのままカリカリとかじるようにしむけ、一日三回与えます。

高橋ナツコ(ペットシッター)

家庭で作る離乳食としては、牛乳に生の牛肉の赤身をひき肉にして加えて、かゆ状にどろどろにしたものや、食パンをちぎってこれに加える方法などがありますが、現在では離乳用のドッグフードもありますし、ソフト・タイプや、セミ・モイスチュアタイプのフードに牛乳を加えて、一日四回半流動状にしたものを与えます。

高橋ナツコ(ペットシッター)
食事の回数は、犬の発育と世代に合わせて、区別しなければいけません。

年齢別の食事の回数の基準は下の表のとおりです。

欧米では、成犬には一日一回の食事にする人が多いようです。

高橋ナツコ(ペットシッター)
ドッグフードは、栄養上の問題はよいとしても、犬が好んで食べないという点が難問として残されています。

もうひとつの面は、こればかり毎日食べさせていては、宇宙食ぜめにあっているようで、食事に変化がなくてかわいそうだ、という考えです。

これは、アメリカの合理主義の産物で、私にはなじめないという愛犬家の心情です。

ドッグフードの嗜好性という点については、メーカーは十分な時間と経費をかけ、研究を重ねて、他の競争相手に一歩でも先行しようとしてしのぎをけずっています。

香りや味、固さや舌ざわりなどの点は、原料の配合と経済性よりも一番気を使っていることなのでしょうが、犬は多様な品種があり、生活環境や飼主の食習慣の影響など、いろいろの要素が複雑にからみ合いますから、すべての犬が絶対に好んで食べ、しかも栄養バランスのよいものを作ることはかなりむずかしいことになるようです。

レバーや肉類は、ほとんどの犬が好んで食べますが、それだけでは再三述べているように、偏食で、よい結果が得られませんので、嗜好性
の向上は、メーカー側の永遠の研究テーマとなることでしょう。

現在のところ、製品のタイプを多様化して、消費者に選択をまかせ、変化を持たせるといった方式がとられているようです。

医学や薬学の実験犬たちは、実験犬舎の中でドッグフードと水だけで生活しています。

この場合は、食事に変化を持たせると、実験内容によってはデータが狂ってしまうこともあり得るからでしょう。

ここの犬たちは、毎日のフードをあきもせず喜んで食べているわけです。

ペット犬は、家族と生活をともにしていますから、いろいろな人の食品を飼主の気のすむように、たとえそれが犬に多少有害であっても与えられ、だんだん嗜好の幅が拡大していきます。

これが文明社会に生きるペット犬の食生活の実情でしょうが、決して好ましい傾向だとは考えにくいのです。

パプア・ニューギニアだったでしょうか、タロイモを主食として生活している土着民がいます。

こういう人たちが、キャラメルやシュークリームやピッツァパイを好んで食べるようになるのには、かなりの年月を要することでしょう。

このことは、まったく逆に、もしかりに、タロイモが栄養的に完全食だとしても、われわれが彼らの主食だけで生活するのは困難でしょう。

現代の犬の食事についても、こういう面があるのは、誰の責任に帰すべきでしょうか。

人間が自分の嗜好に合わせて、身勝手に犬の嗜好の幅をひろげてしまい、多年の純粋な学問としての栄養学的な研究と、それに要する莫大な経費、これを基礎とした企業努力で生産された宝の粒を(しかも経済的な)利用しないのは、まことにもったいないと私は思っています。

犬を、ぐっと人間側に引き寄せて、自分の好きなものを犬にも与えたいという心情派であるあなたには、ドッグフードに、肉やレバー、ある
ときは野菜などを混ぜる場合は、二〇パーセン加ト以内におさえるように忠告します。

この混ぜる量の制限は、これ以上入れて、せっかくの栄養のバランスをくずしたくないからです。

ドッグフードは、確かにアメリカが発祥地で、合理主義的なアメリカ人には向いていると考えやすいのですが、ドッグフードに何かを加えたいという愛犬家の心情は、国籍のいかんを問わず、残念ながら変わらないもののようです。

このことは、アメリカのドッグフード・メーカーが、愛犬家たちに向かっていっている注意書きにも述べられてあり、はっきりした栄養学的根拠があるからです。

最近の若いお母さんの中には、子供を虫歯から守るために、絶対にチョコレートやキャラメルなどの甘いものは与えないことを徹底している方をみかけますが、犬に対しても科学的な割り切りかたが欲しいものです。

高橋ナツコ(ペットシッター)
日本では、ドッグフードについて、さまざまな誤解があって、その普及がさまたげられていると思われるのは、たとえば、ドッグフードの原料は、魚粉やぬかなど、廃棄処分してしまうような材料を集めて製造されているので、こんなものを犬に与えるわけにはいかないという非難があります。

たしかに、日本の群小メーカーの中には、プロイラーの頭部や頸部を主材料にしてペレット状にした粗悪品を流していた時代もありましたが、そういう非良心的なメーカーは、とっくに影が薄くなって、現在では、犬の栄養基準に適合し、犬が喜んで食べてくれるものを製品化することに日夜腐心しているといってもよいぐらい、お互いにブランド名をかけて競争し、品質を高めることを実行しています。

年間の製造高をみましても、大量の原材料の確保と製品の均一化という点で、安い原料を買いつけて、その場その場で製造するなどということはとうてい不可能で、厳重な原材料の吟味からはじまって、コンピューター処理による厳密な配合設計の自動化をはかり、人の食品と同水準の近代的衛生管理のもとに製造されています。

また、製品を市場に出す前の各種のテストは、メーカー付属の研究所で莫大な経費をかけて、実に数百頭、数十種にわたる純粋犬の実験犬を使用したデータによって判定し、さらに、消費者にわたるまでの、あらゆる条件を想定して、温度、湿度を変化させた虐待試験を行ない、蛋白質の変質や、脂肪の酸化のおこりにくいものにする真剣な努力もはらわれています。

次に、ドライ・タイプのドッグフードは、与えた量と同じくらい多量の便がでることがあり、これは、トウモロコシのような不消化の穀類を混入して量をふやしているので、実際の栄養価は疑わしいという説です。

ドライ・フードの原料表示をみますと、トウモロコシ、大豆、小麦粉などを使っていることがわかりますが、粗繊維は、だいたい五パーセント以下におさえており、この繊維類は腸粘膜を適当に刺激するためと、便の水分を吸収して適度な形にするために必要な量であるといわれています。

事実、ドライ・フードを食べた犬の有型便は、ジュウタンの上にされても、それをよごさないだけの固さであり、こんな点についても、消費者の身になって研究されていることがわかります。

便の量が気になる人は、缶詰タイプのフードか、ソフト・タイプやセミ・モイスチュア(半生)タイプのフードを利用すれば、ある程度解決するでしょう。

神経質な犬の飼主は、ドッグフードの中に有害色素や微量な有毒物質があったとしても、犬の寿命が一〇年ほどであるから外にあらわれないので問題にされないのではないか、と主張します。

また、ソフト・タイプやセミ・モイスチュア(半生)タイプのフードが腐敗しないのは、抗生物質が添加されている恐れもあると不安に思っているようです。

有害物質があっても、犬が短命だから健康を害するに至らないのだろうという考えは、まったく正反対で、一年間で成熟する成長のはやい
犬は、人の二〇年近くの年月を一年ほどの短期間に経過することになりますから、むしろ有害物質などの反応や薬害が早く見つかることになるわけで、もし、健康障害が頻発すれば、多数の獣医師から指摘があるはずです。

ソフトや半生タイプの保存性は、人の食品にも添加が許可されているプロピレングリコール(界面活性剤)などを配合し、コロイド溶液で高浸透圧に保ち腐敗しにくくしてあり、殺菌剤や有害色素や抗生物質の添加は許可されていません。

有名ブランドでは色素無添加の製品など、十分な配慮がなされています。

高橋ナツコ(ペットシッター)
いまから=一〇年ほど前にスプラットという名前の船員が、イギリスのある港で救命ボートの掃除をしていたときに、非常用のビスケットを岩壁に捨てたところ、犬がそれを喜んで食べたのにヒントを得て、アメリカに帰国して、犬用のビスケットを売り出したのがはじまりだといわれています。

それから四〇~五〇年後に骨の形をしたビスケットを、ミルクボーンという名で売り出し、さらに、一九二〇~四〇年代は、フランスへ輸出していた馬肉の缶詰を、ドッグフードとして販売した時代もあったといいます。

一九四〇年頃から、今日のペレット状のものが売り出されましたが、炭水化物の熱処理などの研究不足で、下痢をする犬がでたりしたこともあったようです。

しかし、一九五四年(昭和二十九年)頃、人の食品加工機械を応用してから製品の品質が飛躍的に向上して、今日の発展をみるようになっているのです。

アメリカでの}九七六年(昭和五十一年)のドッグフードの販売量は、三〇六七五〇〇万トンということで、冷凍食品の二八八九九〇〇万トンを上回っており、金額にすると二七億ドル、人の朝食用のケロッグとかオートミールは一七億ドル、チューインガム六億五千万ドルということと比較して、さすが犬三八〇〇万頭、猫二五〇〇万頭が飼われている、大国のペットフード産業の強大さが目に見えるようです。

わが国では、戦後、駐留米軍がドッグフードを持ち込んだのがはじまりで、飼料メーカー、食品、乳業、薬品メーカーなどが競ってペットフード製造に着手し、三〇社近い盛況を呈したこともありましたが、自然淘汰が行なわれて、現在では、資本力のある会社の製品が普及していく傾向がみられるのは、愛犬家にとっては好ましいことだといえるでしょう。

高橋ナツコ(ペットシッター)

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