犬の消化器は肉食獣型(高橋ナツコ)

先史時代はともかく、日本人は農耕民族で、菜食主義者の集団のような食生活であったわけですから、その風土で飼われていた日本の犬たちは、人間の食事のおあまりを頂戴して生きていました。

現在でも、日本犬の飼育者の中には、ご飯と味噌汁と魚のあら、煮干しなどがよいといって頑固に守っている人もいるようです。

ドッグフードが日本で販売されはじめた当初、柴犬に与えたところ、オーバーサイズ(標準体高より大型の犬)の犬が多くでて、日本犬にはお米がよい、と主張する声も聞かれたことさえありました。

犬は雑食性であるといわれるところですが、口からはじまって直腸に至る消化器の構造は、オオカミなどと同じ肉食型を示しています。

犬の歯は、草食獣や人の歯のように、食べ物を咀しゃくするタイプの歯型でなく、先端がとがっていて、獲物をくわえて、肉や内臓をくいちぎるのに適した型をしています。

「うちの犬は、食べ物を噛まずに丸のまま飲み込んでしまうので消化が悪いのではないか」と心配する人がいますが、この食べ方が肉食獣特有のもので、犬の唾液には消化酵素がないか、あるいは、ごくわずかしか含まれていないので、唾液は食べ物が飲み込みやすいような役目しか果たしていないのです。

食道が胃に食べ物を送り込む嚥下運動は、かなり強力で、また、拡張力もあるのは、中型犬が、ゴルフボールやトウモロコシの芯などを飲み込んでしまう例からも想像されるでしょう。

犬の胃は人の胃と形は似ていますが、からだの割には大きく、収容能力は全消化管の六〇パーセント以上とされており、病的に拡張したときには、腹腔のほとんど半分を占めるほどにもなります。

胃液も胃酸の分泌量も多いのですが、胃内での消化酵素の作用は比較的弱い傾向にあり、前日食べたものが翌日ほとんど不消化で、そっくり嘔吐されることでもわかります。

肉食獣タイプの消化管の特徴として、全長が短く、体長の五~六倍ということが例に出されますし、蛋白質や脂肪の消化力にくらべ、炭水化物の消化はにがてであることも、よく引き合いに出されることです。

高橋ナツコ(ペットシッター)