鶏肉のささ身を過信しないこと(高橋ナツコ)

犬のからだの水分は約六〇パーセントとされており、その他はほとんど蛋白質でできています。

筋肉やすべての臓器はもとより、胆汁と尿を除くすべての体液、爪や被毛、骨でさえも、蛋白質を主とする構材の上にカルシウムが沈着してできあがっています。

食事の中の蛋白質は、消化されてアミノ酸に分解され、再び動物体の蛋白質を作るのに利用されるわけですから、牛肉などの蛋白は、栄養上、良質の蛋白質と考えてよいわけです。

しかし、蛋白質一五グラムをとるためには、牛肉の場合は、およそ八〇グラム、鶏肉では七○グラム、レバーでは八〇グラム、まぐろ赤身では六〇グラム、焼き豚の場合では三〇グラムが必要であることからわかるように、肉類の水分含有量を頭に入れておくことがたいせつです。

さらに、肉類で問題にしたいことは、発育中の子犬や幼犬には、特に重要であるカルシウムと燐の比率です。

カルシウムと燐は一・二対一・○の割合で補給されるのがよいことは定説になっていますが、鶏肉一〇〇グラム中のカルシウムは四ミリグラム、燐は二七九ミリグラム、牛肉ではカルシウム六ミリグラム、燐二一四ミリグラムと、それぞれ一対七〇、一対三六と燐が極端に多いことがわかります。

そのうえ、カルシウムの吸収に必要なビタミンDの補給もなく、このビタミンの吸収に必要な脂肪の与え方も少ないとなれば、からだに変調があらわれないのが不思議なくらいです。

ポメラニアンなどの、超小型犬のブリーダーの中の一部に、鶏のささ身信奉派がいて、そう佃いう人たちに育てられた子犬の中に、ほんの二・○センチほどの膝の上から床に飛び降りただけで骨折してしまうような犬がみられるのは、研究不足というより、無知としかいいようがありません。

高橋ナツコ(ペットシッター)