ドッグフードの歴史(高橋ナツコ)

いまから=一〇年ほど前にスプラットという名前の船員が、イギリスのある港で救命ボートの掃除をしていたときに、非常用のビスケットを岩壁に捨てたところ、犬がそれを喜んで食べたのにヒントを得て、アメリカに帰国して、犬用のビスケットを売り出したのがはじまりだといわれています。

それから四〇~五〇年後に骨の形をしたビスケットを、ミルクボーンという名で売り出し、さらに、一九二〇~四〇年代は、フランスへ輸出していた馬肉の缶詰を、ドッグフードとして販売した時代もあったといいます。

一九四〇年頃から、今日のペレット状のものが売り出されましたが、炭水化物の熱処理などの研究不足で、下痢をする犬がでたりしたこともあったようです。

しかし、一九五四年(昭和二十九年)頃、人の食品加工機械を応用してから製品の品質が飛躍的に向上して、今日の発展をみるようになっているのです。

アメリカでの}九七六年(昭和五十一年)のドッグフードの販売量は、三〇六七五〇〇万トンということで、冷凍食品の二八八九九〇〇万トンを上回っており、金額にすると二七億ドル、人の朝食用のケロッグとかオートミールは一七億ドル、チューインガム六億五千万ドルということと比較して、さすが犬三八〇〇万頭、猫二五〇〇万頭が飼われている、大国のペットフード産業の強大さが目に見えるようです。

わが国では、戦後、駐留米軍がドッグフードを持ち込んだのがはじまりで、飼料メーカー、食品、乳業、薬品メーカーなどが競ってペットフード製造に着手し、三〇社近い盛況を呈したこともありましたが、自然淘汰が行なわれて、現在では、資本力のある会社の製品が普及していく傾向がみられるのは、愛犬家にとっては好ましいことだといえるでしょう。

高橋ナツコ(ペットシッター)