誤解されているドッグフード(高橋ナツコ)

日本では、ドッグフードについて、さまざまな誤解があって、その普及がさまたげられていると思われるのは、たとえば、ドッグフードの原料は、魚粉やぬかなど、廃棄処分してしまうような材料を集めて製造されているので、こんなものを犬に与えるわけにはいかないという非難があります。

たしかに、日本の群小メーカーの中には、プロイラーの頭部や頸部を主材料にしてペレット状にした粗悪品を流していた時代もありましたが、そういう非良心的なメーカーは、とっくに影が薄くなって、現在では、犬の栄養基準に適合し、犬が喜んで食べてくれるものを製品化することに日夜腐心しているといってもよいぐらい、お互いにブランド名をかけて競争し、品質を高めることを実行しています。

年間の製造高をみましても、大量の原材料の確保と製品の均一化という点で、安い原料を買いつけて、その場その場で製造するなどということはとうてい不可能で、厳重な原材料の吟味からはじまって、コンピューター処理による厳密な配合設計の自動化をはかり、人の食品と同水準の近代的衛生管理のもとに製造されています。

また、製品を市場に出す前の各種のテストは、メーカー付属の研究所で莫大な経費をかけて、実に数百頭、数十種にわたる純粋犬の実験犬を使用したデータによって判定し、さらに、消費者にわたるまでの、あらゆる条件を想定して、温度、湿度を変化させた虐待試験を行ない、蛋白質の変質や、脂肪の酸化のおこりにくいものにする真剣な努力もはらわれています。

次に、ドライ・タイプのドッグフードは、与えた量と同じくらい多量の便がでることがあり、これは、トウモロコシのような不消化の穀類を混入して量をふやしているので、実際の栄養価は疑わしいという説です。

ドライ・フードの原料表示をみますと、トウモロコシ、大豆、小麦粉などを使っていることがわかりますが、粗繊維は、だいたい五パーセント以下におさえており、この繊維類は腸粘膜を適当に刺激するためと、便の水分を吸収して適度な形にするために必要な量であるといわれています。

事実、ドライ・フードを食べた犬の有型便は、ジュウタンの上にされても、それをよごさないだけの固さであり、こんな点についても、消費者の身になって研究されていることがわかります。

便の量が気になる人は、缶詰タイプのフードか、ソフト・タイプやセミ・モイスチュア(半生)タイプのフードを利用すれば、ある程度解決するでしょう。

神経質な犬の飼主は、ドッグフードの中に有害色素や微量な有毒物質があったとしても、犬の寿命が一〇年ほどであるから外にあらわれないので問題にされないのではないか、と主張します。

また、ソフト・タイプやセミ・モイスチュア(半生)タイプのフードが腐敗しないのは、抗生物質が添加されている恐れもあると不安に思っているようです。

有害物質があっても、犬が短命だから健康を害するに至らないのだろうという考えは、まったく正反対で、一年間で成熟する成長のはやい
犬は、人の二〇年近くの年月を一年ほどの短期間に経過することになりますから、むしろ有害物質などの反応や薬害が早く見つかることになるわけで、もし、健康障害が頻発すれば、多数の獣医師から指摘があるはずです。

ソフトや半生タイプの保存性は、人の食品にも添加が許可されているプロピレングリコール(界面活性剤)などを配合し、コロイド溶液で高浸透圧に保ち腐敗しにくくしてあり、殺菌剤や有害色素や抗生物質の添加は許可されていません。

有名ブランドでは色素無添加の製品など、十分な配慮がなされています。

高橋ナツコ(ペットシッター)